鏡下咡語
耳管開放症の謎
熊澤 忠躬
1
1関西医科大学
pp.818-819
発行日 1977年10月20日
Published Date 1977/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208566
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古来耳管開放症に関する報告は非常に稀である。世界で始めて教科書にとり上げられたのは今から約70年前の1905年で,Bezoldによる。その後30年を経て1934年に,鰐淵により日本で始めて日本耳鼻咽喉科全書にとりあげられた。その後約20年間この疾患はまつたく忘却された如く1例の報告も見なかつたが,1951年高原(滋)によつて詳しい報告例が出され,始めて世の注目を浴びたのである。そしてその後,症例報告として散見されるようになつたがその症例総数を数えても僅かに30数例に満たない。 1.果して耳管開放症とはこれほど珍しい疾患であろうか? という疑問に先ず当面する。従来の報告によると,この疾患の診断のために必発の症状として自声強聴があげられている。確定診断には患耳と検耳と与オトスコ一プでつないで,患者に発声させ,その時の患者の声がきわめて大きく響いてくること与認め,この場合に耳鏡検査与して,患者の深呼吸に同調するところの鼓膜運動与発見することが必須条件とされていた。これだけ厳格な条件が具備された症例についてのみ耳管開放症とするならば,それは確かに稀有な疾患といえるであろう。
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