薬剤
鼻アレルギーに対するデカドロン局所注射療法
菅原 基夫
1,2
1京都愛生会山科病院耳鼻咽喉科
2京都府立医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.71-77
発行日 1972年1月20日
Published Date 1972/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207741
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I.はじめに
日常診療において鼻アレルギー患者に遭遇するのは珍しくない。これら患者は3主徴として,鼻閉,水様性鼻漏およびくしゃみ発作を訴える。これら患者に対しては,問診,鼻汁中好酸球の証明,抗原証明のための皮内反応検査そしてこれによつて判明した抗原による誘発試験そしてPK反応による確認などを施行した上で鼻アレルギーと診断を確定し,かつ判明せる抗原のエキスによる特異的減感作療法が治療の本すじである。
しかし,以上のごとき検索と施行するには特殊外来としての機能を必要とするし,またかなりの治療日数を患者に理解させねばならない。また諸種の検索にもかかわらず抗原不明の症例も存在するといわれ,この場合は血管運動性鼻炎という診断名の下に取り扱われる。また上記3主徴を示さない不定型症例が存在し皮内反応陰性例が多いとされている。
鼻アレルギー患者の治療において特異的減感作療法の他に非特異的減感作療法としてヒスタグロビンやパスパートの注射などがありその他日常安易に施行される対症療法として抗ヒスタミン,抗セロトニン,抗ブラディキニン,副腎皮質ステロイド(以下単にステロイドと記す),抗プラスミンそして自律神経調整などの各薬剤による方法が繁用されているのが現状である。
何らかの理由で特異的減感作療法が施行できない場合に対症療法が採用されることとなるが,発症期間を著明に短縮させるという点でステロイドの鼻内浮腫粘膜すなわち下甲介粘膜内への注射療法がかなり有用であると過去に指摘されており,本療法についていささかの知見を得たので,これに関する考察を加えて報告する。
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