鏡下耳語
小児疾患における耳鼻咽喉科医の役割の再認識
調 賢哉
pp.1002-1003
発行日 1971年12月20日
Published Date 1971/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207726
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私ども,診療第一線にいる耳鼻咽喉科臨床医にとつて最近のめざましい耳鼻咽喉科学の進歩についてゆき,精密な聴力検査,平衡機能検査,レントゲンの知識などを駆使し,稀な疾患に至るまで正確な診断,治療を行なう事はもちろん重要な事である。他方,毎日訪れるごくありふれた疾患についても忠実に観察し,知識を深める事はさらに大切な事であろう。私は最近,耳鼻科医を訪れるごくありふれた小児疾患の診断,治療に関して私ども耳鼻科医の果たすべき役割が如何に大であるか痛感している。すなわち私ども耳鼻科医は反射鏡,直達鏡を使用し,鼓膜や咽・喉頭などのような身体内腔深部の状態を正確に把握できる特技をもつているわけである。したがつて小児科医がみれば原因不明と思われる発熱の原因を急性中耳炎であると診断し得たり,また口腔,咽頭の粘膜の微細な変化をとらえて麻疹,突発性発疹またはヘルパンギーナなどと早期に診断し得たりするわけである。この事を自覚する事は,私どもがこの特技を利用して積極的に活動範囲を拡大する事,いわゆる耳鼻咽喉科領域を広げる事にも通じるであろう。私の診療所における小児患者の百分率を調査してみると昭和45年10・11・12月の3カ月間の新患数は2,153名でありうち,6歳以下は495名(約23%)であり,かなりな頻度である事がわかつた。これらの患者のうち自ら訪れたりまたは小児科医より紹介されたりしてくる原因のつかめない発熱あるいは呼吸困難の患者の場合が,おおいに私どもの特技を発揮すべき対称となるわけである。
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