鏡下耳語
中耳炎および副鼻腔炎の再発と再手術
後藤 敏郎
1
1長崎大学
pp.324-325
発行日 1971年4月20日
Published Date 1971/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207623
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中耳炎も副鼻腔炎も急性症が減少し,慢性症が臨床の対象のほとんどを占めるようになり,しかもその慢性症も軽症化してくると,かつての手術による不成功例が目立つてくる。中耳炎や副鼻腔炎に急性症が多く,慢性症も分泌が多量で病症の著明な例が多かつた時代には,慢性中耳炎や慢性副鼻腔炎は手術しても治らないといわれつつも,それによつて合併症の発症を防止することはできたし,治らない例はあつても症状の軽快は期待できた。しかし,病症が軽症化してくると,そのような派手な対象はなくなつてゆき,慢性炎症の結果的な病態や手術による不成功例が目立つようになつてきた。これには抗生物質の普及もすでに20年に及んだことや社会生活の変化などが大きく影響していることは確かであるが,耳鼻科学としてもこれを避けて通るわけにはいかない時期にきているように思う。
どんな手術も不成功例のない手術はない。再手術が行なわれると,悪性腫瘍でない限り大抵は治り,少数のものが再々手術の対象となつたり,少数の特殊な例のみが不成功例として最後まで終るものである。中耳炎と副鼻腔炎の場合には残念ながら,この事情は一般の場合と違つて,比較的多くの例が不成功例として残されており,また手術によつて姿を変えた病態として現われている。
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