- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.緒言
今日,一般に高血圧症,動脈硬化症,低血圧症更に心臓弁膜症など常時血流循環障害のあるものは,内耳に悪影響を及ぼし,聴力低下,耳鳴眩暈と密接な関係ありといわれている。後藤(修)教授はその原因を血流が障害されていると,感覚上皮蝸牛神経の神経節細胞が消失するようになることから生ずると述べ,今日その原因は遺伝の影響によるといわれている老人性難聴(生理的年齢による聴力低下である老年難聴のことではない)の原因さえ内耳基礎膜,コルチ氏器,螺旋神経節の退行変性に陥るとき動脈硬化,脳動脈硬化の因子もこれに干与するといわれている。また高血圧症患者の聴力障害の原因を藤崎氏は,その発現機序を極めて複雑な因子より生ずるものとし,単に一時的血圧の上昇などによつて起ることは少く,長期の高血圧や動脈硬化あるいは血管病変を伴う循環障害によりおこる内耳障害であると述べている。故に私はこれらの聴器に対する影響は,これらの発病時からの期間が問題になると考える。私はこのたび最近国立横須賀病院内科,及び直接聴力障害を訴え耳鼻科を訪れた高血圧症患者,また長期内科に入院中の高血圧症患者の中で50歳以上の他に耳科的疾患を有しない者42例84耳の聴力について調べてみたので,これについていささか所見を述べ諸賢の御参考に供したいと思う。
Hearing tests were made on 43cases in the higher bracket age group from 50 to 70 years old, who complained of high blood pressure. The hearing acuity among these individuals was definitely lowered in all cycles of the test but particularly in high tonal groups. The disturbance of hearing showed a propor-tionate loss with the advancement of decades from 50 to 60 and to 70 yaers of age; the loss in the high tones was similarly propor-tional. A greater loss was seen in this group suffering high blood pressure when compared to others who were more or less normal in health.
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.