特集 出血と止血
Ⅱ.各論
2.腫瘍の出血及び止血
b.咽頭
名越 好古
1
1東邦大学
pp.329-331
発行日 1961年4月20日
Published Date 1961/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202655
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咽頭にみられる腫瘍は部位的には上咽頭及び中・下咽頭で稍々特徴を異にしており,種類では良性,悪性極めて多種類に亘つている。之等腫瘍の症状としての出血は良性腫瘍の場合は稀な症状で,量も問題にならない。併しながら腫瘍では比較的早期に潰瘍を形成し,容出血性である。又鼻咽腔線維腫は鼻閉,鼻出血を訴えて初めて診を乞うこともあり,容易に大出血する特徴がある。一般に悪性腫瘍は周囲組織への侵襲破壊が速かで出血も屡々注日をひく症状であるが,早期にはむしろ診断的意義が大きく止血に苦慮する程の出血は稀である。併しながら晩期になると周囲組織の侵蝕崩壊による大血管の破綻をきたし,突発的大出血をみることが屡々あり,時には致命的出血となるときもある。本論に先きだつて1自験例を述べてみる。
症 例 56歳の婦人で舌根部よP咽頭側壁に及ぶ癌腫で既に周囲組織に広範に侵襲し手術不能の状態にあつたため,レ線照射療法,ラドンシード挿入を行つた。幸い癌組織は縮小し妊転してきたが,左側扁桃下端部に壊死を生じ,咽頭痛,左偏頭痛は次第に増悪した。そこで左外頸動脈を結紮した後,舌骨,舌根部,喉頭蓋,左口蓋扁桃領域を広範に切除摘出した。
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