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Ⅰ.緒言
耳鼻咽喉科の細菌性疾患に対して各種の抗生剤が極めて有効な治療効果を挙げているのは周知の事実である。一方各種の抗生剤に対する細菌の抵抗性が次第に各方面で注目されて来ている。更に不適当な抗生剤の使用が治療成績を反つて不良ならしめる場合もありCandida症1)の如くある種の抗生剤の使用禁忌の場合もあり筆者等も昨年偶然の機会にジヒドロストレプトマイシン1grの皮下注射により不幸急死した症例に立会つた経験もあり抗生剤使用に際して極めて慎重な注意をはらう様になつた。最近抗生剤に抵抗を有する細菌が次第に増加した結果Courville等3)の報告にある通り中耳炎の合併症が増加して耳性脳膜炎,耳性脳膿瘍が再び抗生剤発見以前の如く統計上に出現して来た事は注目すべき事と考える。尚Rønning & Gardborg4)の統計に依るとペニシリンに対する抵抗性のある細菌が比較的多くなつて来て且之等の抵抗性のある細菌によるMastoiditisの併発率も増加しておる事を示している。急性中耳炎の治療に際して当該症例に最も適した抗生剤を選定するには如何にすべきかと云う問題がおきて来た理である。従来筆者等は細谷省吾教授5)指導のもとに過去5年間に亘り中耳炎の起炎菌の検索を行つて来たが抗生剤が新しく応用されだした当初の頃は菌種の決定により大体有効な抗生物質の判定が可能であつた。而るに最近では同じStaphylo—coccus sp.でも抗生剤に対する反応は千差万別で最早菌種の決定のみでは有効抗生剤の判定が不可能な状態になつて来た。我国では梅津6),志水7),三辺他8),宮崎9),尾崎10),関谷22)氏等の感受性試験に関する応用報告が見られている。筆者等11)も有効抗生剤の判定にdilution methodを応用したが之は面倒な手数と操作に長時間を要し又抗生剤の新調製液を要する等のために実用的なroutinetestとしては不適当と認めた。Silcox12), Spau—lding&Anderson13)及びHussar & Holley14)等が指摘した様に抗生剤の感受性試験には乾燥保存出来るSensitivity paper disksが最も実用的である事を知つた。既にDIFCO Laboratory15)より信用出来るBacto-Sensitivity Disksが発売されているが之はペニシリン,ジヒドロストレプトマイシン,オーレマオマイシン,テラマイシン,クロロマイセチン,ポリミキシンB,バシトラシン,エリスロマイシン(藥品名:アイロタイシン)の8種が低濃度,中濃度,高濃度の3群に組合せが出来ている。筆者等も暫くは之を便用したが1回の試験が極めて高い経費を要するので我国で余り使用されていないバシトラシン,ポリミキシンBを除き自家製品を作り実用的に満足すべき結果を得たので茲に報告する。筆者等の製作したSensi—tivity disksは8℃保存の場合6ヵ月はDIFCOの製品と比較して力価が低下して居らなかつた。Sensitivity disk其物に対して臨床応用上或程度の制限の有る事はI.Friedmann18)の指摘せる通りである。技術上且結果判定上種々分析考慮すべき問題もあり使用培地に関しても尚幾多の問題もあり筆者等の経験上の判断も若干後述するが兎も角何の根拠もなく抗生剤を使用するよりは遙かに有用なるindicatorと云う意味で之を重視して実用化に努力した次第である。
Kurosu and associates devise a method by which sensitivity of the micro organisms against antibiotics to be employed may be detected beforehand by use of paper disk constructed under a specific process. If these disks are stored under 8 degree centigrade temperature their activities are found to be outlasting by 6 months longer than similar products produced by DIFCO.
The present paper is a report on use of these discs for tests among 53 cases of otitis media and 8 cases of malignancies postoperati-vely.
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