論説
興味ある食道茸腫の1症例
伊藤 卓
1
1岩手醫科大學耳鼻咽喉科教室
pp.124-126
発行日 1948年6月1日
Published Date 1948/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200076
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緒言
從來食道腫瘍と云へば、必ず癌腫を想起せしむ程、食道の非癌腫性腫瘍は少きものとされてゐる。其の中、有莖良性食道腫瘍を廣く食道茸腫と稱してゐる事は衆知の通であるが、食道茸腫は屡々自覺症状を缺除する爲め、臨床的には比較的閑却され、Denker u.Kahler氏成書に依れば、17世紀末に剖檢屍體より始めて發見報告の記載がある。然るに18世紀以降世人の注目を牽くに到り、逐次諸學者に依り、形態的に、或は病理組織學的に、又「レ」線學的に研究され、本邦に於ても田上・久保氏の症例を始めとし、數氏の報告があり、其後田宮氏に依りレ線學的に詳細に研究されてゐる。余は最近興味ある嗄聲・鼾聲を主訴とした食道茸腫に遭遇したので、其症例に就き詳述し先人の症例に追加すると共に、併せて若干の考察を加へて見度い。
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