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I.緒論並びに文献的考察
類乾癬が独立した疾患として取扱われるようになってから約70年を経ているが,今日でもなおその病因乃至発生病理は全く不明というほかはなく,また臨床症状及び組織病変に特徴的なものが少ないため,類乾癬といえば"はきだめ"的存在として扱われる傾向にある。本症は周知の如く1902年Brocqが別表の通り分類し,その大綱は今目に到るまでほぼそのまま踏襲されて来ている。このうち滴状類乾癬及び局面性類乾癬の2者は,その臨床像が比較的明確なため混乱を来す可能性は少ないが,Parapsoriasis lichenoides及びParakeratosis variegataとされる病型については,後にも述べる如く従来より種々なる意見が表明されていて,現在に到るもなお学者間に統一的見解がみられない状態である。我々は最近Parapsoriasis lichenoidesとすべき2症例及び我々がparakeratosis variegataと考える2症例に遭遇したので,以上,各症例を報告するとともに,これら2病型及びこの両者間の相互関係について論じてみたい。
類乾癬の歴史はParakeratosis variegataとともに始まっている。即ち1890年Unna-Santi-PollitzerがParakeratosis variegataなる病名を附して2症例を報告したのを最初として,次いで1894年Jadassohnが,今日滴状類乾癬と目される症例に対しpsoriasiformes u. lichenoi-des Exanthemなる病名を与えたが,このものとその後諸家により同症として報告された症例を,Juliusbergが1899年Pityriasis lichenoi-des chronicaなる呼称を以て総括した。これより少しさき即ち1897年Brocqは,今日局面性類乾癬とされる症例をerythrodermie pityriasi-que en plaques dissemineesとして報告しており,又1900年Radcliffe-CrockerはLichenvariegatusとして扁平苔癬に類似した症例を記載した。その後1902年に到つてBrocqは自験例とともにそれ迄の症例をParapsoriasis〈類乾癬〉の名の下に統一整理するとともに,滴状類乾癬,局面性類乾癬をそれぞれその1型とし,Para-keratosis variegataとLichen variegatusとを一括して1つの病型即ち類乾癬の第Ⅱ型とし,これをParapsoriasis lichenoidesと呼び前2者と鼎立せしめた。しかし乍らBrocqがParap-soriasis lichenoideとしたものに該当する症例は元来少なく,又その病像には不明確な点も少なくなく,従つて学者によつて本病型に対するイメージにかなりの喰い違いのあることが窺われる。このことは例えばBrocqの分類にやや遅れて,1905年Csillag2)がParakeratosis variegataを滴状類乾癬の増悪型(gesteigerte Form)に過ぎないとしたり,またWise(1923)3)がPoikilo-dermia atrophicans vascularisとして供覧した症例について,MacLeodはParakeratosisvariegataと診断したのに対し,Pollitzerは自身嘗てUnnaらと経験せるParakeratosisvariegataとは異なるものとしたところからも想像されるのである。
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