Japanese
English
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先天性生毛不全症の集団遺伝学的研究
POPULATION GENETICS OF HYPOTRICHOSIS CONGENITA
吉田 良夫
1
Yoshio YOSHIDA
1
1東北大学医学部皮膚科教室
1Department of Dermatology, Tohoku University School of Medicine
pp.861-864
発行日 1963年9月1日
Published Date 1963/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203598
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I.はじめに
最近原子エネルギーの開発が進むにつれて,放射能の影響により悪性遺伝性疾患が増加するのではないかと危惧されている。放射能の生物に対する遺伝的影響は突然変異の誘発であり,しかもこの大多数は病的形質として表現されることは多くの実験によって実証されている。しかしながら放射能が,人類に対してどの程度に突然変異を起し集団内有害遺伝子の頻度を高め,ひいては有害形質の頻度を高めるかについてはまだ十分に明らかにされていない。この問題を解決するには,まず一定集団内の遺伝性疾患の頻度を知ることが必要である。この種の基礎的資料は全世界を通じてまだ不十分で,ことにわが国ではこの種の調査研究を行なうのに特に恵まれた条件のもとにおかれているにもかかわらず,日本人について調査した資料は極めて乏しい。たまたま国連科学委員会からこの方面の基礎的資料を求められたこととも関連し,「放射線が人類集団の遺伝的構成に及ぼす影響についての基礎的研究」を課題とする研究班(代表者田中克己)が結成されこの方面の調査を行なうことになった。著者はこの研究班の一員として皮膚科領域の遺伝性疾患を担当し,先天性生毛不全症,遺伝性対側性色素異常症,色素性乾皮症などに関する集団遺伝学的研究を行なつたが,ここでは宮城県内小学校全学童を対象にして行なつた先天性生毛不全症に関する調査の結果を報告する。
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