Japanese
English
原著
膀胱ヘルニヤの1例
VESICAL HERNIA: A CASE REPORT
梶田 一之
1
,
福島 孝
1
Kazuyuki KAZITA
1
,
Takasi FUKUSIMA
1
1関東労災病院泌尿器科
1Department of Urology, Kanto-Rohsai Hospital
pp.761-764
発行日 1961年9月1日
Published Date 1961/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203126
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I.緒言
ヘルニヤは体腔の壁側被膜が体壁間隙から嚢状に突出し,その中に内臓の滑脱した状態を意味する。ヘルニヤは一般に嚢,被膜及びその内容と,これらの脱出する門より成立つている。その内容は小腸,大網,大腸が多く,比較的稀なものとして卵巣及び卵管,胃,脾,膀胱,子宮があり,例外的なものとして腎及び膵等がある。ヘルニヤの代表的なものは腹部ヘルニヤであつて,その種類及び頻度は11)鼠径ヘルニヤ80〜92%,大腿ヘルニヤ2.5〜5%,臍ヘルニヤ2〜4%,腹壁ヘルニヤ1.5〜8%,閉鎖管ヘルニヤ,会陰ヘルニヤ,坐骨ヘルニヤ,腰ヘルニヤ,内ヘルニヤ(狭義),横隔膜ヘルニヤの各1%以下である。
膀胱壁がヘルニヤの内容となる場合は他の腹膜内臓器の場合と区別して,成書11)では滑脱ヘルニヤSliding Herniaとしているが,本症は1605年Platerが第1例を報告,次いで1620年Jean Sa-laが第2例を報告して以来5),現在迄すでに欧米文献症例は400例に達している13)。本邦では鈴木及び中野14)の報告以来,剖検例1例1)を含めて10例の報告がある。われわれは最近経験した本症の1例を報告すると共に若干の文献的考察をおこなう。
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