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テオハルン無尿症の1例
武井 久雄
1
1新潟大学医学部泌尿器科教室
pp.457-459
発行日 1956年7月1日
Published Date 1956/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201723
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テオハルンは1883年Liebigによりメラミンとして合成され,接着剤の原料として使用されていたが,1944年Lipschitz & Haddianはその利尿効果を研究し,動物実験に於いて尿素の利尿効果をIとすれば,メラミンはその76.5倍に当ると報告した。テオハルンは本邦に於ける商品名で,その化学名は1・3・5-triamino triazineである(第1図)。
本剤は白色の結晶で,臭気なく,微かに苦味を有し,水,アルコール,エーテル,酸及びアルカリに殆んど不溶である。テオハルンは本邦では昭和23年田坂等が初めて浮腫或は乏尿を伴う疾患に用いたが,同時に彼等は,テオハルンの腎クリアランスを測定し,本剤が主として尿細管の再吸収を抑制するものであると述べている。その後多数の臨床家によつて今日迄用いられているが,その利尿効果は著明で,長期連用に耐え,過量に投与しても副作用は少いと言われている。しかし時に口渇,悪心,下痢,血圧の上昇及び結石形成を起すことがあるとされている。私は偶々本剤によつて発生した無尿症の1例を経験したので茲に報告すると同時に,2・3の点に就て考按を試みた。
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