--------------------
温泉と皮膚疾患との関係(第2報)—鳴子温泉の泉質と湯治概況
阿部 政雄
1
,
浜田 芳郎
2
1東北大学医学部皮膚科教室
2東北大学鳴子分院皮膚科
pp.957-959
発行日 1955年11月1日
Published Date 1955/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201534
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
我国には到るところに温泉が湧出し,入浴を好む風俗と相俟つて,古くから皮膚疾患の温泉治療が広く経験的に行われて来たが,之に対する科学的検討は余りなされておらない。従つて患者は云い伝えにより勝手に湯治を行い,却つて疾患を増悪せしめることが少くなく,一方多くの皮膚科医師も温泉に対する関心が薄く,又適応を決定するのに準拠すべき研究も殆んどないため,患者に対し入浴の指導をすることが困難な現状である。治療医学の進歩の目ざましい今日,今更百年一日の如き温泉療法を問題にする必要はない様にも思われるが,実地に温泉療法にたづさわつてみると,今尚湯治を行つている皮膚病患者は可成り多く,温泉のすばらしい治効作用(例えば止痒作用)転地,気象等の影響により頑固な皮膚病が軽快する場合が少くない。然し逆にその適応,泉質,入浴方法を誤れば却つて増悪する場合も屡々見られる。従つて温泉治療を行つている我々は皮膚疾患の臨牀的観察と実験的研究より,湯治の適応,入浴方法を確立する必要を痛感している。曩に教室黒崎は戦後より昭和28年迄約8年間に東北大学皮膚科を訪れた患者中,既往温泉療法を行つた者343人について統計的観察を行い,第一報として報告したが余等は主に鳴子分院に於ける湯治客の観察を基に皮膚疾患の温泉療法を記述する。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.