特集 ホルモン研究の進歩
類宦官症とホルモン療法
志田 圭三
1
1東京醫科齒科大學
pp.812-820
発行日 1953年11月20日
Published Date 1953/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201098
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I.諸言
男性性機能の中枢は睾丸である。睾丸より分泌された男性ホルモンにより副性器は肥大發育し,かつ男性としての二次性徴が完全に出現する。思春期前に睾丸の機能失調をきたす時には男性ホルモンの缺如により二次性徴は出現せず,かつ性器も小兒の状態にとゞまり類宦官症なる特有の臨床像を呈する。思春期前に去勢された"宦官"に類似の臨床像を呈する事により類宦官症なる名稱が與えられているが一つの獨立した疾患でなく,むしろ症候群ともいうべきものである。本症の記載はTandler & Gross以來多數みられたが,その發生病理については不明な點が少くなく,かつ治療面に於ても全く絶望に近い状態であつた。しかるにこゝ数年來,下垂髄,性腺をふくめ内分泌學の急速な進展にともない,その發生病理も闡明に近く,かつホルモン製劑の豊富なる供給を得,ようやく臨床症状の著明なる改善をきたしたという報告に接するに至つている。
著者はさきに牛下垂體並に人胎盤性性腺刺戟ホルモン混合製劑"Synahorin"2)並にTestosterone propfonate "Enarmon"6)による類宦官症の治驗例を報告したが,今度はその後の症例を追加すると共に本症の臨床一般についていさゝか述べてみたい。
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