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腎盂性腎嚢腫の1例
井上 彦八郎
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1新潟大學醫學部皮膚泌尿器科教室
pp.144-148
発行日 1953年3月1日
Published Date 1953/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200927
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腎嚢腫は比較的珍らしい疾患とされているが,最近ではBraasch and Hendrick(1944),Ochs-ner(1951)及びRieser et al(1951)等の諸家は以前本疾患に入れられていなかつた疾患をも,この疾患の中に含める樣になつて來ている。そして諸家の報告を渉獵して見ると,腎嚢腫一般に對する臨床症状,診斷殊にレ線診斷法及び病理解剖學的檢索等一應究明されている樣である。併し乍らその内でも各疾患の細部に至つては未だ問題が殘されており,末だ検討されねばならない諸點が多々ある。
之等腎嚢腫の中腎實質内に肉眼的,組織學的及びレ線學的に腎盂又は腎杯と交通ありと認められる空洞を有するものがあるが,これも未だ解決されていないものの1つであつて,殊にその命名に就ては決定的な結論に達していない。かかる變化を有する腎疾患のまとまつた報告は1928年 Gal-kinを以て嚆矢とする。即ち彼はHawkins(1833)の1例以後自驗例を加え12例となし詳細に報告している。爾來多くの人達の注目する所となり現在迄手許に集め得た症例は52例となつている。併しGalkinの集めた12例を初めとし,それ以後に於いても,その報告者の觀點の相違から與えられた名稱は各種各樣であり,現在に至るも尚その一致を見ていない。
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