特集 性病
油性Penicillin療法による成人梅毒100例
大森 周三郎
1
,
齋藤 英一
1
,
川島 甲子雄
2
1横濱警友病院皮膚科
2東京讀賣診療所皮膚科
pp.619-625
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200850
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I緒言
ペニシリン(以下P)が1929年Flemingによつて發見されて諸種の疾病に優秀な藥劑として應用されるに至つたが,之が梅毒に試用されたのはその發見より14年後の事である。即ち1943年10月Mahoney及びその助手Arnold等が家兎の實験梅毒及び早期梅毒患者に就て,Pに依るスピロヘータの速かな消失を認め,特に油性の出現に依つてその治療が簡易化ざれるに及び爾來實験的にも臨床的にもPに依る梅毒の治療は急速な進歩を見るに至つた。
吾國に於てはPの驅梅療法は從來諸種の事情から甚だ少なく數例の報告を散見するに過ぎず,最近に於ける稍々多數例と思われる纏つた報告では谷奧氏(1949)の11例,加納氏等(1950)の49例,伊藤氏等(1950)の27例,山本氏等(1950)の19例,重松氏等(1951)の17例等がある。之等は何れも水溶性Pを使用したもの,又乳小兒梅毒のものを含んでいる。茲に余等が述べようとする症例は,総て1)成人梅毒で,2)油性Pを使用し,3)治療後最短3ヵ月以上經過を追及したものである。此の條件の下に於て經驗した100例に就て述べてみようと思う。
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