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皮膚結核の診斷
伊藤 實
1
1東北大學
pp.87-92
発行日 1949年3月1日
Published Date 1949/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200162
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I
我國では肺その他各種の結核患者が夥しく,公衆衞生上寒心に耐えぬ状態にあるにも拘わらず,皮膚結核の症例は寧ろ稀有に屬し,一般醫家の經驗せられるものはたかだか淋巴腺やカリエスに續發する皮膚腺病位で,眞箇の皮膚結核に至つては我々専門醫の許でもそれ程多數に經驗されない.從つて診斷に對する臨休的觀察を一層愼重にせねばならぬ譯であるが,吾人はアレルギー理念に準據した分類に基いて診斷の指針となすのが便宜と考えるので,先づこの點に少し觸れて置きたい.即ちPirquetのアレルギー提唱に先立っ1896年DarierがTuberculide結核疹なる病類を提案して以後暫くは皮膚結核と結核疹とに分つ分類が專ら採用され,後者は主として菌毒に職由するものと解せられて居たが,その後所謂結核疹の組織學的檢査に於て概ね結核肉芽腫を指摘し,且つ僅少ながら結核菌が證明せられるに及び疑義が起り,やがてアレルギー説の擡頭により結核病理の解説が一段と進歩し,前記結核疹はアレルギー性過敏を獲得せる皮膚に,血行性に僅少なる結核菌或はその菌毒が撒布されて發症する一類と做す廣義の見解に革まったが,臨牀上の便宜から今日も之を踏襲し特に診斷には重用されて居る.
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