姙娠性疱疹の1例

1872年Miltonによつて獨立疾患となされし姙娠性疱疹(Herpes gestationis)はその發病經過を考慮外におけば、そして專ら皮膚症状のみに主眼を注ぐとすれば、既に諸家の説く如く本症とDuhring疱疹状皮膚炎との鑑別は困難となり、殊に兩疾患の眞因の闡明されざる今日、愈々その感を深くする。然し今茲に姙娠性疱疹の發病經過の特異な點、即ち懷胎に際して發病し、分娩後速かに自然治癒を營むことの一再ならず繰返し、非姙娠期間には完全に本症状より免れるのを常とすることを肯定することによつて、正に本症と診定し得られた1症例を經驗せし故、以下その大要を報告する。