特集 冠動脈疾患のリスク管理のフロントライン
序文
野出 孝一
1
1佐賀大学医学部循環器内科
pp.506-507
発行日 2019年10月1日
Published Date 2019/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1438200290
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2019年の12月には脳卒中・循環器病対策基本法が施行されるが,この法案の骨子の一つは循環器病予防である.循環器病予防において重要なことは動脈硬化を生理的・生化学・形態的観点から的確に早期診断し,その原因であるリスクファクターを厳格に管理し,動脈硬化に合併する心不全,不整脈,弁膜症の発症や悪化を防ぎ,突然死を抑制することである.
冠動脈疾患患者では,一般住民と比較して心血管イベント発生率が高いことから,その予防は臨床的にも医療経済的にも意義が大きい.これまでの疫学研究から高血圧,糖尿病,脂質異常症,喫煙,CKDなどが動脈硬化の進展や心血管事故発症の危険因子であることがわかっている.また,危険因子の重複も多く,その重複によりイベントリスクが高まることから,包括的リスク管理が重要であることは言うまでもない.欧米の観察研究によれば,冠動脈疾患患者では複数の危険因子に対する管理が良好であれば長期予後も軽快することが報告されている.日本においても,2017年に発表されたJ-DOIT 3試験において,対象は一次予防の糖尿病患者ではあるが,長期にわたる血糖・血圧・脂質・肥満に対する積極的な介入の有用性が示された.心血管イベント再発の予防として,生活・運動習慣,食事療法,薬物療法を含めた積極的な介入が重要である.
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