特集 循環器の現場からの検証:そのエビデンスを日本で活用するには?
Ⅵ.わが国でのリアルワールドデータの活用
心不全
筒井 裕之
1
,
加来 秀隆
1
,
井手 友美
1
1九州大学大学院医学研究院循環器内科学
pp.151-158
発行日 2019年1月1日
Published Date 2019/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1438200238
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Point
・リアルワールドデータ(real world data;RWD)とは,診療報酬請求(レセプト)やDPCデータ,診療録,健診データなどの実際の診療行為に基づくデータまたはそのデータベースのことであり,RWDから導き出されたエビデンスをリアルワールドエビデンス(real world evidence;RWE)と呼ぶ.
・RWDは日常臨床における患者や診療の実態を把握するのに有用であるばかりでなく,その病態生理の解明や今後の有効な治療法を確立するうえで重要な情報を提供する.
・わが国の心不全患者を対象とした大規模な多施設登録観察研究として,JCARE-CARD研究,ATTEND registry,CHART研究は心不全のRWDを解析したものである.
・慢性腎臓病(CKD),高尿酸血症,貧血は心不全の病態と深く関わっており,独立した予後の規定因子であることから,その早期診断と適切な治療の重要性が示された.
・大規模臨床試験で有効性が証明されているβ遮断薬やスピロノラクトンの投与が,実際の患者で予後の改善と関連していることが証明された.
・医療の実態をそのまま反映したRWDを解析する観察研究によってランダム化比較試験(RCT)などの介入研究とは異なる新たな知見が導き出せると期待される.心不全の病態のさらなる理解と新たな治療法の確立のために,臨床試験とRWDを活用した登録観察研究を車の両輪とした推進が必要である.
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