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療養介護保険が開始され,脳神経外科の対象患者も高齢者がふえています.当院でも療養型病棟を開き,一般病棟ではみられなかった紫色尿バッグ症候群(purple urine bag syndrome:PUBS)を経験しました.1978年に最初に報告され1),1988年に細菌学的に着色機序が解明されたが2),まだ十分に理解されていません.当院(定数218)で,32例の膀胱カテーテル留置患者のうち6例に認めました.全例女性で平均年齢は78.3歳,4例は脳血管障害慢性期で,5例が経管栄養管理で長期臥床の高度意識障害の患者でした.
着色機序は,慢性便秘のために腸内細菌が異常増殖し,アミノ酸のトリプトファンがインドールに分解され,血液中に吸収されて,肝臓で硫酸抱合されインジカンとなって尿中に排泄される.感染尿があると,尿中細菌の産生するサルファターゼによって不溶性のインジゴ色素に変化し,蓄尿バッグに付着して,PUBSとなる.感染尿はあっても発熱原因とならない症例が多く,抗生剤は必要ない.本症候群は,安易に臥床管理を続け,食物繊維の少ない経管栄養管理で慢性便秘とし,膀胱カテーテル留置で感染尿を繰り返し,外陰部周囲の不潔が原因であり,これらの悪環境を断つことで容易にPUBSは改善される.当院でも尿をオムツ管理にしたり,膀胱カテーテル留置患者に週2回の膀胱洗浄をして感染尿を抑え,日中の座位を促して,ミキサー食(経口食を砕いたもの)を経管栄養に併用したり,腸内細菌叢の正常化のために乳酸菌製剤を摂取して,便秘の改善を図ったことで,5例のPUBSは消失した.1例は着色が薄くなったが消えず,尿路感染の発熱に伴い,1週間の抗菌剤の内服でPUBSは消退した.
本症候群は寝たきり高齢患者に対して,安易な臥床管理や管の留置管理をしてはならない現代医療への警鐘であり,この現象に病的意義は少ないが,臨床の場では見過ごさずに衛生環境改善に対処すべきである.
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