読者からの手紙
航空機内のけいれん
北井 隆平
1
1福井医科大学脳神経外科
pp.474
発行日 1999年5月10日
Published Date 1999/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901726
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私事で申し訳ないが,母は7年前に破裂脳動脈瘤の手術を受け,幸いにも術後合併症もなく元気に生活している.最近,海外旅行をすることになり,航空機搭載薬剤を調べる機会があった.表1に日本航空の医師用キットの搭載薬剤一覧を示すが1),抗けいれん剤は含まれていない.海外旅行中は時差による不眠や疲労,不慣れな食事による服薬の不徹底等,けいれんの素因を有する患者にとってよい状況ではない.けいれんを誘発する条件がそろっていると言える.外来で患者より海外旅行の申し出があった場合,私などは回復を喜び,むしろ喜んで送り出してきた.もちろん,けいれんを有する者の航空機利用は制限されるべきでない.統計上,機内救急患者のうちけいれんをきたした患者は5%あると報告されている1).重積状態になった場合は緊急着陸せざるを得ないであろう.諸外国ではジアゼパムを搭載している航空会社もあるが3),本邦は抗けいれん剤は抗精神薬に分類され,管理の面から現行法上搭載は困難である4).緊急着陸のコスト($100 000)に達することもある2)と重積患者を放置した際のリスクを考えると搭載されてよい薬剤と考えられる.有効な経口薬も存在し2),緊急時のマニュアルと共に常備するのも一考ではあるまいか.最後に,航空機搭載医師用キットは医師のみが開封を許されており,日本航空の統計では94年度の国際線で82件の医師の緊急呼び出しに対し65件の医師の援助の申し出があったとのことである1).
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