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特集 くも膜下出血のニューフロンティア—病態の再考と治療の進化
Editorial
Editorial
遠藤 英徳
1
1東北大学大学院医学系研究科神経外科学分野
pp.889
発行日 2024年9月10日
Published Date 2024/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204995
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顕微鏡手術の黎明期においては,くも膜下出血に対する直達術,つまりクリッピング術はごく一部のエキスパートだけに許される特殊技術でした.しかし,顕微鏡手術の標準化が進んだ現在においては,クリッピング術は若手脳神経外科医が一人前の術者になるための,または学会公認の技術認定医となるための,顕微鏡手術の登竜門として位置づけられるようになりました.一方で,International Subarachnoid Aneurysm Trial(ISAT)による血管内治療の優位性の証明,その後の新規デバイスの開発や治療低侵襲化への世論などから血管内治療が台頭し,破裂脳動脈瘤に対して血管内治療を第一選択とする施設が全く珍しくない時代となりました.さらに,両者を使い分けるハイブリッド脳神経外科医の登場も相まって,破裂脳動脈瘤急性期の治療選択は混沌としていますが,根治性と安全性の交点がより高い最適な治療を選択するべきであると考えます.
確かに,直達術や血管内治療の治療技術は数十年前と比較すると飛躍的に進化しました.しかし,「くも膜下出血の治療転帰は実は20年前と比較して改善がない」との脳神経外科医にとってはショッキングな報告もあります.これは,脳神経外科医のたゆまぬ努力によって脳動脈瘤そのものに対する治療技術は向上しているものの,くも膜下出血の病態そのものは未だに克服されていないことに起因すると考えられます.そのような状況において,2022年4月に世界に先駆けて本邦で使用可能となったクラゾセンタンの登場は,その病態を再考するためのよい足がかりと捉えることもできます.
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