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特集 髄膜腫の現在—最新の知識を活かした最善の治療のために
Editorial
Editorial
大宅 宗一
1
1群馬大学大学院医学系研究科脳神経外科学
pp.673
発行日 2024年7月10日
Published Date 2024/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204966
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髄膜腫は,その多くが組織学的には良性であり緩徐に増大する腫瘍であるが,治療対象としてみると実に多様性に富む疾患である.第一に,経過観察が適切なものから非常にリスクが高く手術不可能なもの,そしてリスクがあっても摘出が望ましいものまで存在し,治療すべきかどうかの判断に悩むことも多い.また,発生部位によって症状や治療リスクが大きく異なり,近年は部位の違いが腫瘍細胞の増殖能に関連することもわかっている.こうした発生部位の違いは多種多様な手術法にも関連しており,脳神経外科医には多くの手術アプローチに精通することが要求される.そして,摘出後の挙動もまちまちである.残存した腫瘍が何十年も変化しないこともあれば,再発を繰り返し最終的に頭蓋内播種や体腔への転移を来すことすらある.再治療を要する過程で,麻痺が生じ,言葉が出にくくなり,高次脳機能が低下し,論文内の単なる“無再発期間”では語れないさまざまな負担が患者を苦しめる.
手術技術の標準化や手術成績の均てん化が叫ばれる現代である.しかし,あえて誤解を恐れずに私見を述べれば,髄膜腫は術者間・施設間に治療成績の差が依然として残る領域の1つではないだろうか.そのような中で,腫瘍としての生物学的特性の理解の促進,新規手術関連デバイスへの習熟,そして発展著しい血管内治療や放射線治療の併用などにより,髄膜腫の多様性の多くが克服されつつあり,全体の治療成績は確実に向上しているとも感じている.
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