連載 海外での手術経験から学ぶ—手術環境・道具・技術そして心の重要性
vol. 3 外国での手術経験から日本の若手脳神経外科医に伝えたいこと
栗田 浩樹
1
1埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科
キーワード:
出張手術
,
医療体制
,
医療経済
,
技術伝授
,
手術環境
,
保険環境
,
global position
Keyword:
出張手術
,
医療体制
,
医療経済
,
技術伝授
,
手術環境
,
保険環境
,
global position
pp.480-485
発行日 2022年3月10日
Published Date 2022/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204574
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はじめに
中堅以上の脳神経外科医になり,基幹施設(大学)に所属して専門分野(subspecialty)の手術経験が蓄積されてくると,連携・関連施設から手術の依頼を受けることが多々ある.このような手術依頼は外科医として嬉しいものであるが,筆者はこのような「出張手術(いわゆるお座敷オペ)」をしないことを脳神経外科医としての誇りにしてきた.無論,医療過疎地で患者の搬送が困難である場合など,やむを得ない場合もあることは十分承知しており,筆者も手術の指導医として関連病院の手術に参加することはあるが,術前・術後に患者の状態を自分で把握・管理できない手術を自身で執刀することは,医師の倫理に反すると考えてきたからである(責任の所在があやふやな手術はしない.術前・術後の説明,術後のfollowは必ず自身で行う).よって,今まで国内で出張手術をした経験は筆者にはない.しかしこのpolicyは,自分の手術が必要な患者には遠方からでも大学に来てもらうことを前提としており,時に患者や家族に多大な負担を強いていることは否めない.
外科医としてのpolicyを変えた訳では決してないが,最近は,発展途上国で手術する機会が比較的増えた.それは,それだけの価値があると考えているからである.本稿では,今までの外国での手術経験から,その「価値」について,日本の若手脳神経外科医に伝えたいことを述べたい.
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