特集 グリオーマ—現在の常識と近未来のスタンダード
Editorial
武笠 晃丈
1
1熊本大学医学部脳神経外科
pp.465
発行日 2021年5月10日
Published Date 2021/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204417
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グリオーマなど脳腫瘍の診療は,近年目覚ましい発展を遂げている.これは,診断においては次世代シーケンサーの登場をはじめとする分子遺伝学的解析技術の加速度的な進歩により,そのゲノム・エピゲノム異常の解明が急速に進み,2016年に改訂された中枢神経系腫瘍のWHO分類においても,分子遺伝学的異常に重きを置く病理診断が画期的な形で導入されたことにも象徴されている.今や常識となったグリオーマのIDH遺伝子異常にしても,それが初めて報告されたのは2008年であり,まだ10年と少ししか経っていない中での日常臨床でのスタンダードの変化には驚くべきものがある.この分子遺伝学的異常の同定は画像解析技術の進歩とも相まって,radiomics/radiogenomicsという新しい分野も拓きつつある.また,2019年にはがん遺伝子パネル検査が保険収載されるなど,ゲノム医療は実際の治療へ向けても応用されつつある.
治療においては,特に医用工学的な進歩が目覚ましく,画像解析技術向上による精細な術前シミュレーション画像作成などの周術期支援強化に加え,手術の現場も大きく変容しつつある.術者による職人技を支えるさまざまな電気生理学的モニタリング技術やナビゲーションシステムの進歩と普及,神経内視鏡の一般化や外視鏡などの機器の開発,術中MRIの導入など種々の変革がもたらされ,われわれ医師はこれらの新技術に対応できる必要がある.手術以外でも,放射線治療機器・技術の向上のほか,分子標的療法,免疫療法やウイルス療法などさまざまな治療法開発が急ピッチで進んでいる.
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