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Ⅰ.はじめに
難治性てんかんに対してさまざまな刺激療法が行われてきたが2,24,31),現在,普及し拡大を続けている植込み型デバイスは,迷走神経刺激療法(vagus nerve stimulation:VNS)のシステム(VNS Therapy® System. LivaNova USA, Inc., Houston, TX, USA)である9).1980年代から基礎研究が進められ,欧州では1994年,米国では1997年に正式に認可された.VNSの治験は本邦においても1993〜1997年にかけて行われ,認可申請されたが1),承認を得るには時間を要した.2006年10月から始まった厚生労働省の「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」の第2回会合(2007年2月)でVNSが取り上げられ,これによって本邦においてもようやく日の目を見ることとなった.2010年1月に薬事法承認,同年7月に保険適用となったことで保険償還が可能となり,急速に普及していった19-21).
VNSのデバイスは,本邦での治験の頃はNeuroCybernetic Prosthesis®(Model 100)というプロトタイプであったが,2010年から実際に使われ始めたのは小型化されたDemipulseTM(Model 103)であった.次いでAspireHCTM(Model 105)でバッテリー寿命が1.5倍となり汎用された.そして2017年3月に,本邦においても心拍感知型のAspireSR®(Model 106)が薬事法承認となり,導入に至った.発作時頻拍を感知して刺激を開始するVNSの新しい刺激方法であり,VNSとしては初めてのclosed loop systemのデバイスである.
一方で,脳を直接刺激しててんかんの発作を抑制する手法は,本邦においては現時点で認可されたデバイスはないが,海外ではdeep brain stimulation(DBS)が唯一認可された治療手段であった10,24).ただし,DBSは脳を直接刺激するとはいっても,発作の焦点に直接的に作用するわけではない.本稿で解説するもう1つの治療法であるresponsive neurostimulator(RNS® System. NeuroPace, Inc., Mountain View, CA, USA)は焦点診断が必要であり,DBSとはまったく異なる仕組みでできており,2018年1月時点で,認可は未だ米国内のみであるが,次第に普及してきている.
今回,本稿では新しい植込み型デバイスであるAspireSR®とRNS® Systemの2つのclosed loop systemについて解説し,難治性てんかんに対する最新の刺激療法に触れることとする.
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