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Ⅰ.はじめに
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対しては,迅速で的確な診断と専門医による治療が必要である.その診断ならびに治療後の経過観察では,computed tomography(CT)を中心にさまざまな画像診断検査が行われる.特に脳動脈瘤検索のためのCT angiography(CTA),血管撮影(cerebral angiography:CAG)は,標準的な検査として行われている10).一方,未破裂動脈瘤の場合には,年月を経過するごとに拡大するリスクが高まることが報告されており10),半年から1年ごとの画像による経過観察を行うことが推奨されている.その場合スクリーニングとしてはmagnetic resonance angiography(MRA),手術適応などで選別し,さらなる検討にはCTAやCAGが推奨されている.これら脳動脈瘤に対する治療は,外科的手術である開頭クリッピング術あるいは脳血管内治療(interventional neuroradiology:IVNR)が選択される.IVNRは開頭クリッピング術と比べて低侵襲であることからここ数年急速に普及しつつあるが,長引く透視のため放射線被ばくによる確定的影響である皮膚障害が報告されている7).
放射線による確定的影響は皮膚障害だけではなく,水晶体への影響も懸念されている3).International Commission on Radiological Protection(ICRP)では最近の知見6,8,9)などから水晶体混濁へのしきい線量を5Gyから0.5Gyへ引き下げるべくステートメント2)を発表している.くも膜下出血に対する診断から治療後の経過観察,とりわけ合併症が疑われた場合にはCT検査の頻度は高まる傾向にある.Sandborgら13)は,くも膜下出血の患者が,入院期間中に画像診断検査やIVNRによって受ける水晶体被ばくの71%は,CTによってもたらされると報告している.X線を使った画像診断検査による影響は,確定的影響のみならず,がん誘発や遺伝子異常などの確率的影響も考慮する必要がある.これら確率的影響の評価およびCTとCAGなど異なった検査の被ばく線量を評価するためには,ICRPによって導入された臓器線量や実効線量が必要である1).
そこで本研究の目的は,①人体ファントムの種々の組織・臓器位置に小型のフォトダイオード線量計を埋め込んだ臓器線量計測システムを使用して,臨床における透視・撮影条件の調査に基づいたCAG,IVNR,CTAの被ばく線量を実測することで得られた,患者の入射皮膚線量,水晶体などの臓器線量,実効線量の評価,②動脈瘤患者の画像診断検査履歴を調査し,ファントム実験の線量データを掛け合わせることで得られた,3年間の蓄積された脳線量,水晶体線量および実効線量の評価である.
This study aimed to evaluate radiation doses to patients undergoing X-ray diagnosis, treatment, and follow-up for cerebral aneurysms. Radiation doses were measured for computed tomography angiography(CTA), cerebral angiography(CAG), and interventional neuroradiology(IVNR)by using small-sized silicon-photodiode dosimeters, which were implanted at various tissue and organ positions within an anthropomorphic phantom. Lens doses, brain doses, and effective doses obtained in this study were 26mGy, 67mGy, and 4.6mSv for CAG;77mGy, 250mGy, and 8.7mSv for IVNR;and 56mGy, 53mGy, and 1.5mSv for CTA. Entrance skin dose associated with mean fluoroscopy time and digital subtraction angiography frame was 0.82Gy for IVNR, which was less than the threshold dose of 2Gy for the onset of skin injury. The lens doses obtained with CTA, including non-contrast CT, was 106mGy, which was a factor of 4 higher than the dose of 26mGy for CAG. Effective dose for CTA was 1.5mSv compared to 4.5mSv for CAG. Patients with cerebral aneurysms received a cumulative lens dose of 543mGy throughout 3 years follow-up, which was over the estimated threshold of 0.5Gy for cataracts.
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