扉
般若の心
太田 富雄
1
1大阪医科大学脳神経外科
pp.507-508
発行日 1989年6月10日
Published Date 1989/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202828
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「近代科学文明の合言葉は自然破壊である」といった人がいる.そうかも知れない.ランドサットからみるアマゾン流域の緑の荒廃ぶりは目を覆うものがある.また,安住の地を追われた動物達も,食物を求めて田畑を荒らし,自己防衛から人間にも危害を加えざるをえなくなっている.
一方では,このような問題は,きっと科学自身が解決してくれるに違いないといっている人もいる.石油が枯渇しても,原子力があるし,太陽エネルギーの利用も可能である.過剰に放出される炭酸ガスの温室効果で北極・南極の氷が解け,ほとんどの陸地が水没しても,海底に居住地を移し,海上空港式の浮かぶ陸地をチョモランマ島に係留し,そこに娯楽施設や病院を建設すればよいと,実際,幸福を測る絶対的尺度がない限り,すべての者がそのような環境下に住むというのなら,何も問題は起こらないのかも知れない.
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