扉
国際協力事業について
高久 晃
1
1富山医科薬科大学脳神経外科
pp.5-6
発行日 1988年1月10日
Published Date 1988/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202522
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最近,国際交流・国際協力の言葉を旗印に国際間の姉妹都市そして姉妹大学が大はやりであり,私の大学にも中国・東南アジアなどからの研究生があとをたたず,昼の学生食堂は一寸した国際サロンの雰囲気をかもし出している.日本の脳神経外科医の先達が彼の地に学問を求めて貨客船で渡航した時代とは対照的な先進国日本(?)を象徴する光景である.この国際交流絵図は多少なりともどの大学にも認められるようであるが,このことについて情報交換の機会があると"学問における国際協力は単に与えるだけのものではなく,その関係はevenであらねばならない"などの意見もみられ,この事業が決して簡単なものではないことが認識される.国際協力・交流とは言ってもそこには共同研究的なものもあろうし,また対外医療援助としての協力事業もあり,一概に論ずることはできない.しかし,発展途上国との協力事業ではたとえそれが医学に関することでも場合によっては太平洋戦争に続く日本の贖罪的色彩の濃いものもあり,またその国の民政安定政策の一環に結果として加担させられる場合もありうる.また日本側の関係者も単に"与えてやっている"というはなもちならない自意識過剰にとらわれ易い分野でもある.しかし,このような態度では本当の国際協力・国際交流が進展できるとは思われない.
かく言う私も一寸した国際協力事業の一端をになう立場にいる.
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