扉
Ethicsと空気とDeontology
坂田 一記
1
1岐阜大学第2外科
pp.921-922
発行日 1976年10月10日
Published Date 1976/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200516
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この「扉」で西村,松本両教授が脳神経外科医のHamlet的苦悩について述べられたのは記憶に新しい.筆者はこの一文により屋上屋を架することになるかもしれない.否,屋上屋を架していくことがむしろ望ましいのでないかと考えるのである.
某年某月某日,近在の総合病院の産婦人科で異様な顔貌の新生児が生まれ,教室の医師が依頼を受けて診察したところ,clover leaf skull syndromeであることがわかった.ところで困ったことに,父親はこの児の生存を希望せず,母親と対面させることすら拒否した.困惑した産婦人科医の依頼を受けて,患児を当科に引き取ることとし,経費は学用扱いとしたが,家族は一切付き添わないので,衣類やおしめの提供洗濯などすべて看護婦諸君の好意に負うこととした.患児は当初比較的順調に発育し,それがまた筆者らの悩みの種ともなったが,生後26日目突然呼吸困難をきたして死亡し,剖検にて左胸腔内感染症を認めた.
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