扉
LogosとErgonの間
山本 信二郎
1
1金沢大学脳神経外科
pp.795-796
発行日 1975年10月10日
Published Date 1975/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200358
- 有料閲覧
- 文献概要
われわれを取りまく,専門科目を横文字にした場合,最後に-ologyのつくものとつかぬものがある.前者は,anesthesiology,dermatology,ophthalmology,oto-laryn-gology,urologyなどであり,後者には,medicine,orthopedy,pediatrics,surgeryなどがある.これらを一見して気付くことは,-ologyすなわちlogosのつくのは,新しい部門,すなわち内科あるいは外科から,さらに専門分野として派生した領域のものであり,これを欠くのは,古くからある医療部門であることである.
Neurosurgeryの中核をなす,surgeryの語源をたどるとsurgery→surgerie→cirurgerie→chirurgeryとなり遂にchirurgia=χειρο〓ργ〓α=χε〓ρ+〓ργονに帰する.これは手の仕事hand workである.外科という言葉の由来も,これは,「内」に対する「外」ではなく,むしろ漢方の「本道」に対応するものである.したがって,外科の起源は洋の東西を問わず,work=ergonの面が強調され,logosとの結びつきが薄かったといえる.外科が真に近代医学の仲間に入れるようになったのは,Listerによる無菌手術に幕を開け,無痛法が確立されて以来のことで,手術治療に対する理論的体系が出来てからである.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.