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2013年7月10~12日にスイスのルツェルンで開催された第12回国際脳血管攣縮学会(Vasospasm 2013)に参加しました.会長はアーラウ州立病院のJavier Fandino教授でした.この学会は1973年に「International Conference on Cerebral Vasospasm」として設立され,ここ数年の欧米を中心としたくも膜下出血(SAH)後の遅発性脳障害の発生機序に関する新たな展開を受け,前回大会より正式名称は「International Conference on Neurovascular Events after Subarachnoid Hemorrhage」に改称されました.最近の臨床研究で,脳血管攣縮の克服だけではSAHの予後改善に限界があることが繰り返し報告され,遅発性神経症状の原因として脳血管攣縮とは別に,early brain injury(EBI)という新たな病態が提唱されたり,微小循環障害やcortical spreading depolarization(CSD)の関与が報告されるなど,脳側の要因が重要視されるようになってきました.新たなターゲットが提示され,結果的に本学会は再活性化された印象があります.
開催地ルツェルンは,スイス中央部,通称ルツェルン湖の北西端で,湖より流れ出すロイス川沿いに位置する標高436mにある人口約8万人の古都です.美しい湖となだらかな山々に囲まれ,カペル橋などの古い屋根付きの木橋,見事な壁画の建物や凝った彫像のついた水飲み場,かつての城壁など,中世の町並が美しく,周辺には世界一の急斜面を登る山岳鉄道やピラトゥス山,リギ山があり,さらにはウィリアム・テルの伝説に代表されるスイス建国の史跡があり,奥に連なるアルプスの山々との対比はまるで絵画のようでした.学会会場はルツェルン駅のすぐ隣で湖畔にたたずむ,フランスの世界的建築家ジャン・ヌーヴェルによって設計された近代的な複合文化センター「ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター(KKL)」でした.ぐっと突き出た屋根,湖から水を引いたように見える池,小窓や回廊の部分など,船をモチーフにしたデザインは美しいだけでなく,世界的音楽祭が開催されるほどの音響効果を誇り,目の前に広がる湖や山々を借景にしたホワイエの雰囲気も最高で,素晴らしい環境での学会でした.学会中日には会長主催でルツェルン湖のディナークルージングを楽しみました.
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