Japanese
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医療問題
アメリカの脳神経外科診療における医療危機
Professional Liability Crisis in America
伊藤 昌徳
1
Masanori ITO
1
1東京都保健医療公社東部地域病院脳神経外科
pp.395-401
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100375
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Ⅰ.はじめに
わが国の脳神経外科医は“手術室で顕微鏡をのぞいてばかりいて視野狭窄状態に陥っており,医療問題に関しては疎い”との指摘があります.しかし一方では,最近の医療に対する信頼の低下,医療訴訟の増加,医療保険制度改革などに関する問題意識は否応なしに高まってきています3).筆者は2003年のアメリカ脳神経外科学会(AANS 2003):日米脳神経外科友好シンポジウムにおいて,わが国の医療保険制度について講演する機会を与えられました8).発表準備の過程において,アメリカの医療保険制度と比較しながら論を進める必要性を痛感したため,アメリカの医療の問題点について検討しました.アメリカの脳神経外科医とは発表前にE-mail交換により議論を煮詰め,発表時にも議論する機会を得ました.シンポジウムでの討論者のひとりであるDr. Jim Bean(ケンタッキー州レキシントン)に両国の医師賠償責任問題についても触れるようにすすめられましたが,限られた時間内にこれを述べることはできませんでした.アメリカの医師はMedicareやMedicaid(政府)やManaged Care(民間医療保険会社)からの過度な治療に対する支払い拒否と患者からの訴訟という厳しい環境の中で診療に当たっています4,5).わが国ではアメリカの医療危機の詳細については報道されておらず,われわれの関心はむしろ低いといえます.アメリカの医療問題を対岸の火事として捉えることなく,わが国の脳神経外科医自身の問題として意識する必要があります.
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