扉
能(脳)のない脳神経外科医
小山 素麿
1
Tsunemaro KOYAMA
1
1脊髄疾患臨床研究所
pp.3-4
発行日 2007年1月10日
Published Date 2007/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100236
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私が大学院生であったころは大学紛争が終結しておらず,研究室にも自由に出入りできない時代でした.実験のテーマは松本 悟先生(現 神戸大学名誉教授)からいただいたもので,種々のニトロソウレアによる神経系の奇形と腫瘍の関係を調べることでした.間もなく北野病院に移られたため,実際にご指導いただいたのは半田譲二先生(後の滋賀医科大学病院長)でした.この実験は妊娠中のラットに薬物を投与し,その子供の状態を観察することですから短期間には結果が出ません.しかし,精密な実験器具は不要で出産直前に開腹し,その胎児を顕微鏡下で解剖して脳や脊髄の変化をみることと,出産させた場合は,成鼠の死亡したとき,脳や脊髄に腫瘍があるかを観察し記録に残すだけの研究であったのです.このことが幸いし研究室が封鎖される直前に軽トラックを買い,これにケージを乗せて自宅やネーベン先の病院に移動することですみました.困ったことは,当時まだ家庭にはクーラーがなくラットを飼っている部屋だけ大金を払って設置したこと,冬は暖房の温度の管理に苦労したことでした.
その頃,教室のほぼ全員が購読していた雑誌は Journal of Neurosurgeryで,私は「脳と神経」のお世話にもなりました.やがて,「脳神経外科」が発刊され,外科医は自然に移行してゆきました.
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