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I.はじめに
哺乳類などの高等動物では,神経系の個体発生がさまざまな外的あるいは内的な要因によって修飾され,ひいては成熟後の神経機能が不可逆的に変化することが知られている。外的な要因としては出生直後の視覚体験などが知られている。内的な要因として最も顕著な効果を示すものとしては,出生前後のホルモン環境が挙げられる1)。出生直後の雄ラットを去勢すると,成熟後にアンドロジェンを投与しても雄型の性行動を示さず,脳下垂体からのLH分泌も雌のように周期性を示す。逆に出生直後の雌ラットにアンドロジェンを投与すると,成熟後に雄型の性行動を示すようになり,LH分泌も雄のように非周期性を示す。このように外的あるいは内的な要因が成熟後の神経系の機能に不可逆的な影響を与える場合,共通していえることは,いずれもこれらの要因の作用に臨界期が存在することである。発生段階のある一定の時期を過ぎると,同じ処置をしても同様の効果が現われない。したがって,これらの要因は神経系の発生過程の特定の局面,すなわち神経系の形態形成や個々のニューロンの機能分化などの諸過程に作用しているものと思われる。
It is established that, in higher vertebrate species, development of neural organization is highly dependent on various diffasible factors including hormones and peptide neurotrophic factors. Neonatal administration of sex steroids permanently alters brain organization and behavior. Although precise mechanisms of the hormonal action on developing neural tissue is not yet clarified, sex steroids have been shown to exert neurotrophic influences on various developmental processes such as neuronal survival, process outgrowth and synapse formation.
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