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I.血脳関門の開放
血脳関門は,脳血管内皮細胞において,多くの蛋白質あるいは水溶性物質の血管内より脳内への通過を阻止している。tight junctionが内皮細胞同士を密に結合させ,細胞の間隙からの物質の移動を防いでいる。血脳関門は種々の病的状態や実験的条件(例えば高血圧1),冷凍あるいは外傷など)により開放されるが,開放によりしばしば脳浮腫を合併し,それに伴って二次的傷害をもたらす。また,脳浮腫に伴う循環障害により,逆に血脳関門がさらに破綻をきたす。このように血脳関門の破綻と脳浮腫とは,互いに悪循環を繰り返し,脳の不可逆的病変をもたらすものと考えられている。しかしながら,血脳関門を一過性にのみ開放すれば,脳浮腫を伴うことなく極めて生理的に近い状態で開放することができるはずである。
Urakabeら2)は各種の内皮細胞を用いて,細胞を高張液中に置くと極性をもった溶液に対して透過性が増加するという事実を見出したが,この現象は高浸透圧により細胞収縮し,細胞内のjunctional complexが開くことによるものであると考えられる3)。Rapoportらはこの現象を応用して,高張液を蜘蛛膜の上から脳血管に作用させるか,あるいは頸動脈に注入することによって血脳関門を開放する方法を開発した。彼らは種々の溶液を用いて浸透圧性の血脳関門開放の実験を行ない,以下の点を明らかにした4〜7)。
Abstract
Osmotic opening of the blood-brain barrier by carotid perfusion with hypertonic solution has been suggested as a possible technique for transientlyaltering the permeability of the blood-brain interface. In the present paper, papers concerning osmotic opening of the blood-brain barrier were briefly reviewed. The mechanism operating in the phenomenon has been explained in terms of opening of the tight junction of endothelial cells due to shrinkage of the cells or an increased vesicular transport in the cells, and is still not decided.
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