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はじめに
森の静寂に佇むとき,私どもの耳は1枚の落葉の音をさえ感ずることができる。このさい内耳では,微かな音波情報が(有)毛細胞に到達して変換器の機構が動作していることは当然である。Bekesy5)の観測値から計算すると,最小可聴値における基底板の振幅は10−3)Aとなり,感覚毛先端の偏位もそれに近いものであろうと考えられる。感覚毛の長さはリスザル基礎回転の外毛細胞では約2μmと報告されている35)。感覚毛を長さ2mの釣竿にたとえてみると先端の偏位は2μmとなり,これはおよそ屈曲とか傾斜とかいうような変形ではない。感覚毛の基底小体方向への屈曲が毛細胞膜の脱分極を起こすという説21)が一般に信じられている。哺乳類聴器においては強大音刺激の場合以外にはそれははなはだ疑問である。最小可聴値近辺の刺激に対して感覚毛にはきわめて微細なゆさぶりがかかるだけであろうし,毛細胞にはそのさいに変換機構が動作する十分な態勢が整っているはずである。聴器生理の研究を進めるうえにおいて,以上のような見直しを必要とする問題も数多い。かかる観点から,ここでは今までに知られている蝸牛の電気現象を概観し,さらに最近可能となった毛細胞内電位記録の成績から内耳における変換のメカニズムを考察する。
Abstract
Since the electrical responses to sound stimuli were first recorded from the cat's cochlea about an half century has been gone. A huge bulk of experiment on cochlear responses was carried outand the variable resistance microphone theory was proposed by Davis. The exact transducer mechanism of hair cells, however, still remains to be elucidated. Recently the intracellular potentials of the inner and outer hair cells in the guinea pig's cochlea were identified with a marking tech-nique. Electrical properties of the hair cell membrane were investigated in the amphibia and reptile.
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