Japanese
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特集 精神薄弱
脳の奇形—脳の形態形成障害とその機序
Congenital malformations of the brain: With special reference to their abnormal morphogenesis
村上 氏廣
1
Ujihiro Murakami
1
1名古屋大学環境医学研究所
1Research Institute of Environmental Medicine, Nagoya University
pp.45-57
発行日 1968年4月25日
Published Date 1968/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904481
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I.はじめに
ヒトの脳の奇形は二つの特徴をもつ。その一つは脳,脊髄を含む中枢神経系はすべての器官に先立つて発生早期よりきわめて急速な発生と分化を行なうことで,他の一つは同じ哺乳動物でもヒトは特異な存在で,大脳皮質の分化にあつては,まつたく他の哺乳類とは比較のできない問題を包括しているということである。ゆえに,中枢神経系とくに脳の形態形成障害について比較発生病理学的考察を行なう場合にはそのことをまず念頭におかなければならない。この第二の場合が他の器官系とはまつたく異なつた点である。
しかし,ヒトの脳の奇形の形態形成morphogenesisはいまだその分化が異常に陥らない発生段階より動的に追跡研究を行なつてはじめて理解される。かような動的観察はヒトにおいて胚より胎児にいたる脳について行なわれることが望ましいことはいうまでもないが,実際にはある外的作因によつて成立する特定の脳の発生障害について,それぞれの発生段階について逐時的に観察することは不可能である。したがつて大脳皮質の分化障害を除いては同様な型の異常を実験的に成立させ,その形態形成機序および成立の発生段階も知ることができる。かような分野を比較発生病理学とよんでいる。
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