Japanese
English
特集 脳血管性障害・II
脳動脈硬化性精神病
Cerebral Arteriosclerotic Psychosis
山本 達也
1
,
前川 杏二
2
Tatsuya Yamamoto
1
,
Kyoji Maekawa
2
1東京大学医学部脳研究所
2東京大学医学部精神医学教室
1Institute of Brain Research, Tokyo University, School of Medicine
2Dept. of Neuropsychiatry, Tokyo University, School of Medicine
pp.553-561
発行日 1961年9月25日
Published Date 1961/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903934
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I.まえがき
脳動脈硬化症は,器質性脳疾患のうちでもその数が多く,代表的であるところから,精神医学の領域においてもすでに古くからよく調べられてきたものの一つである。しかしこのような事情は,逆にいえば比較的早くから臨床面で一応の体系が整い,その症状構成も単調であるのに加え,治療が困難であるなどの理由のために,症候学それ自体は現在の精神医学にとつて,もはや主要な研究対象とはなりにくいという結果をもたらした。むしろこの疾患についての主な関心は,広く老人性精神障害を含めて,これを精神衛生の観点から取扱うこと,あるいは脳動脈硬化症における血管病変の形態学的追求など,いわば分化した次元への傾向が強まりつつある。そのほか,この疾患における脳病理学的巣症状の問題はまた重要なものであるにも拘らず,実際には巣症状の構造分析に重点がおかれ,基礎疾患たる脳動脈硬化症は単にその病因としての地位を与えられているにすぎない。
以上のように,研究の最尖端からそれたかの観のある脳動脈硬化症の臨床についてのこの小論では,痴呆,記憶障害,健忘などといつた具体的諸症状についてふれることはさけ,この疾患に関する比較的最近の論文から,形態と精神機能との関連を一つの軸として把え,さらにこの相互関係に変容をもたらす条件を考慮するとともに,脳動脈硬化と老人性精神障害との鑑別の問題をも含めた綜説というかたちでまとめてみた。
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