特集 職業病から作業関連疾患へ
作業関連疾患
動脈硬化性疾患
矢野 栄二
1
Eiji YANO
1
1帝京大学医学部公衆衛生学教室
pp.679-682
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900662
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◆はじめに
産業保健の教科書を見ると,いくつかの化学物質が動脈硬化を引き起こし,突然死の原因になることが報告されている.例えば化学繊維工業でみられる二硫化炭素中毒や,一酸化炭素による心筋障害はよく知られている.しかしこれらの疾患は作業に関連して発生しているとはいえ,今日「作業関連疾患」と呼ばれるものの主要なものではなく,むしろ古くからある「職業病」という言葉により良く当てはまる例であろう.それではすでに「職業病」という言葉がある中で,「作業関連疾患」とはいかなる概念を指す言葉なのであろうか.1987年に開かれた労働衛生に関するILO/WHO合同委員会の報告書1)をみると,「職業病」が有害化学物質など産業現場にある特異的な原因による特異的な疾病を意味することが多いのに対して,「作業関連疾患」は一般的な疾患が作業との関係で発現したり,悪化することに注目してつけられた呼称と考えられる.
今日わが国で,作業関連疾患として取り上げられる疾患群のなかには脳血管疾患,心疾患,高血圧が主要なものとしてあり,これらは動脈硬化性疾患としてまとめられる.したがってここで取り上げる動脈硬化性疾患は,作業関連疾患の主要な部分をなすといえよう.
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