Japanese
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特集 脳血管性障害・I
実験的脳栓塞の研究—血管閉塞と脳病巣との関係を中心として
Experimental Cerebral Infarction in the Dog: Obserbations on the Sites of Vascular Obliteration and Induced Cerebral Lesions
塚越 広
1
,
山本 英夫
1
,
杉田 秀夫
1
,
豊倉 康夫
1
Hiroshi Tsukagoshi
1
,
Hideo Yamamoto
1
,
Hideo Sugita
1
,
Yasuo Toyokura
1
1東京大学医学部冲中内科
1Department of Okinaka's Interna Medicine, School of Medicine, Tokyo University
pp.345-357
発行日 1961年5月25日
Published Date 1961/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903919
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I.緒言
脳軟化の問題を論議する場合には,血管系との関係が重要な位置を占めてくる。しかるに人の脳軟化においては,これに関係する血管系の異常,特に動脈の閉塞を確認することは必ずしも容易ではない。そこで,我々は実験的に血管閉塞部位を確認できるような方法を用いて脳軟化をつくり,病巣と閉塞部位との関係を検討することにした。軟化巣と血管系との関係を直接的に知る方法は,脳動脈の結紮である。しかし,このためには手術的に開頭して脳血管を露出せねばならず,又結紮に伴う種々の機械的因子を避けることは困難である。我々はこの方法をとらず,凝固血液注入により脳栓塞をつくるMillikan1)等の方法を応用して凝固血液に色素を加え,或は鉛粉を混じて,脳動脈に注入し,血管閉塞を起させた。この方法の利点は,脳動脈結紮よりも手技が簡単で,しかも自然に近い状態で脳軟化を起させることができ,且つ容易に血管閉塞部位を見出し得ることである。
我々の実験的脳栓塞の主目的ほ,上の如く血管閉塞と脳病巣との関係を検討することにあつたのであるが,この他に我々が目標としたものは次の事項である。即ち,人の脳軟化は,実に多種多様であるが,実験的に,これらのうちのいかなろ病巣をつくりうるかということが,一つの目標であり,又内頸動脈系の閉塞と,椎骨動脈,脳底動脈系の閉塞との病巣並びに臨床症状の相違を検討することが,もう一つの目標であつた。
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