特集 肝脳疾患・Ⅰ
Eck氏瘻における中枢神経症状
佐藤 倚男
1
1東京医科大学精神神経科
pp.249-254
発行日 1959年1月20日
Published Date 1959/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901670
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中枢神経系はその機能維持のためにいくつかの体液環境上の条件を必要とする。これらの条件のうち,酸素の供給,ブドウ糖の供給はもつとも重要なものであり,中枢神経系といえども他の身体諸組織と並べて例外ではない。むしろ低酸素症,低血糖状態において,もつとも早く障害を来すものは神経系である。そしてこの2つの条件の障害については,臨床例もあるため,病理的組織的知見がかなり知られており,実験的にもその生理的生化学的知識が深められている。またいくつかのビタミン欠乏においても,いち早く中枢神経症状ないし末稍神経障害がおこる。一部の内分泌障害においても同様である。
ところが肝臓障害に見られる中枢神経症状は,上に列挙した条件のいずれとも決らず,その脳障害の原因はほぼ不明のまま残されていると言える。それどころかいわゆる肝脳疾患においては,はたして中枢神経疾状の原因が肝臓であるか否かも疑いがのこされていた。肝脳疾患と総称されるものの病因がすべて同一であるとは言えないが,すくなくともWilson氏病を除いた残りの肝脳疾患は,脳症状の原因探求という立場からは今のところ一括して扱われている。
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