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はじめに
近年,神経生理学,とくに細胞外記録により神経スパイク活動と細胞の機能との対応を研究する電気生理学において,「スパイク活動の何に情報がコードされているのか?」という問題が注目されている。従来からの単一細胞の平均発火率に着目する考え方に対して,細胞集団コーディングや時間的コーディングなどのアイデアとそれらを支持する実験データなどの登場により,この問題をめぐる議論は活性化させられている。現段階では,複数のグループが自らの実験データをもとに,その解釈として異なるコーディングパラダイムを提唱しており,お互いの主張に相矛盾する点も存在する混沌とした状態である。このような状況を整理して眺めてみると,それぞれの実験データ同士には矛盾が存在しないが,研究者の解釈同士が矛盾を産み出している構図が存在する1)。この混乱の背後には,実験データをどのように解釈してモデル,パラダイムを構築していくかという脳研究自体の方法論に関する問題が存在している。本稿では,まず脳研究とモデルの設定との関係についての一般論を議論した後に,具体例として最近の時間的情報コードの話題を取り上げ,「同じ現象でも研究者のモデルの設定の違いにより見え方は大きく異なる。何が,現在自分が設定しているモデルであるのかを常に把握することが重要である。」という結論に至る。
In recent years, considerable attention has been focused on a basic question “how the information is encoded in spiking neuronal activities?” At present, there exist various different coding paradigms proposed by different researchers based on their own experimental data. However some of the proposed paradigms show apparent contradictions each other. Being in such a confusion, it is important to re-examine the logical relationship between the brain research and the paradigm constructed through the modeling the observed phenomena.
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