半側空間無視と眼球運動異常

Eye movement patterns in unilateral spatial neglect

はじめに

　健常人は外界の空間に対して，ほぼ左右均等に注意をはらうことができ，いつも一側のものを見落としたり，またそれにぶつかるということはない。ところが，一側の大脳半球に損傷を受けると，「病巣の対側の刺激に気づかず反応しない，またそちらを向こうとしない現象」（Heilman et al，1985）が起こる。これを「半側空間無視」といい，ヒトでは大半が右半球損傷で起こり，左側を無視する症状が現れる。典型的な半側空間無視患者は，食事をとる際，左側のおかずに気づかず食べ残し，ベッドの左側にいる見舞客に気づかなかったりする。また，臨床的検査では，花の絵を模写させると左側を描き落とし（図1A），多数の線分のすべてに印を付けるように命じると左側を見落とし（B），水平な線分の真ん中に印を付けて二等分させると，印が右方へ偏位する（C）（石合，1991）。

Unilateral spatial neglect is the failure of brain-damaged patients to report, respond, or orientate to stimuli presented in the side of space contralateral to the lesion, which usually involves the right parietal lobe. Patients with left unilateral spatial neglect seem to have rightward attentional bias, difficulty in shifting attention leftward, and impaired disengagement of attention from the right-sided stimuli.