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特集 第29回脳のシンポジウム
神経系の物質輸送機構
新しい分子モーターと神経細胞内の物質輸送の機構(抄録)
Identification of new molecular motors and the mechanisms of axonal transport
廣川 信隆
1
Nobutaka HIROKAWA
1
1東京大学医学部解剖学教室
1Department of Anatomy, Faculty of Medicine, The University of Tokyo
pp.989-991
発行日 1994年12月10日
Published Date 1994/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900602
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神経細胞は,刺激の伝達の方向に沿って樹状突起,細胞体,軸索,シナプスというきわめて極性のある形態を分化させた細胞であり,軸索は時にlmもある長い突起であるが,不思議なことにその中で蛋白合成が行われないため軸索内,およびシナプス領域で必要な蛋白はすべて細胞体で合成された後,軸索流と呼ばれる物質輸送の機構により末梢に運ばれなければならない。この意味で軸索流は神経細胞の形態形成,機能発現にとり大変重要な機構である。軸索流には,膜小器官の形で蛋白を運ぶ速い輸送(400~200mm/day)と,主に細胞骨格蛋白などを運ぶ遅い輸送(2~0.5mm/day)があるが,これらの機構についての私たちの最近の研究結果を紹介する。
遅い輸送は,細胞骨格蛋白を送るため,神経細胞の形態形成,維持にとり重要である。この機構に関して,細胞骨格蛋白がどこで重合し,どのような形で運ばれるかが重要な問題である。これに関して従来,細胞骨格蛋白は,細胞体で合成された後すぐに重合し,ポリマーの滑り運動で運ばれるとするポリマー滑り説が有力であった。
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