Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
近年日本では脳死の判定基準をめぐり,政府,医学界およびマス・メディアにおいて,数多くの論議が出ているようである。私はカナダに住んでおり,日本で行なわれている論争の詳細はよくわからないが,限られたインフォメーションを総合してみると,その背景としては,脳死を個体死として認定することにより,脳死者より臓器を摘出して移植適応患者に移植を行ないたいという日本医師会,厚生省と一部の医師グループの動きと,それに反対する医師・市民グループとの間にみられる論争のようである。
私は長期間医学研究に従事しており,その研究テーマは神経細胞(ニューロン)の組織培養である。これは死亡したヒトまたは実験動物の脳よりニューロンを分離して,試験管またはペトリ皿にて数ヵ月以上生育させて,そのニューロンの生理学的または化学的性質を検索する学問である。このような個人的な体験をもとにして,脳死に対する私の考えを述べたいと思う。
The pronoucement of death is generally based on the cessation of respiration and heart beat (cardiac death), but brain death has recently gained wide acceptance among physicians and other circles. In 1985, a study group headed by Prof. K. Takeuchi has established a formula for the determination of brain death. They are: (1) coma with cerebral unresponsiveness, (2) apnea, (3) dilated pupils, (4) absence of brain stem function, and (5) electrocerebral silence.
The public generally views the practice of brain death with suspicion; to them, a patient with beating heart is not dead.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.