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はじめに
インターロイキン2(IL-2)は,1976年にMorganらによって,T細胞系リンパ球の培養上清中に分泌されるT細胞増殖因子として発見された1)。続いて,活性化されたT細胞はIL-2を産生すると同時に,IL-2と結合するレセプター(IL-2R)を発現することが見出されたのを機に,IL-2/IL-2Rシステムを介したT細胞の活性化機構の解析がin vitroの系で急速に進み2,3),IL-2は抗原認識によって引き金が引かれる一連の免疫反応に重要な役割を果たしていることが明らかにされた。また,T細胞がIL-2に反応するのは抗原などの刺激を受けたときだけでなく,未熟T細胞が胸腺内で分化するときにもIL-2を必要とすることが示唆されている4,5)。さらに,IL-2はT細胞以外の複数種の細胞表面にも結合し,それら細胞の活性化または増殖を誘導することが,最近次々と報告されている6,7)。その中には,一見免疫反応に関与していないと考えられる神経系の細胞も含まれており8),IL-2の生物活性の重要性と多様性を示唆している(表1)。
しかし,これら情報のほとんどがin vitroの実験系で見出されたもので,同じように多彩な機能が生体内で発揮されているか否かについては明らかでない。このようにin vitroで同定された物質の生理的機能は,その物質が正常状態とは異なった量を産生する,あるいはbiasのかかった条件の個体を解析することによって,解明可能となりうる。その目的で,われわれはヒトIL-2遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製したところ9),神経系に異常をきたしたマウスが作製された。その異常はin vitroの系からは予測されなかった症状である。本稿では,まずこのトランスジェニックマウスの特徴の詳細を示し,in vitreの実験系から得た知見から神経症状発症の原因を考察することによって,in vivoにおけるIL-2の役割を考えてみたい。
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