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I.はじめに
神経細胞の増殖,分化あるいは生存には,シナプスを形成する標的ニューロンや近傍グリア細胞から合成,分泌される神経栄養因子(neurotrophic factors)が必要とされることが知られている。したがって,神経栄養因子の検索およびその生理的役割の解明は,神経系の多様な細胞分化のメカニズムを理解するうえできわめて重要であるし,さらに将来の神経機能障害の治療法を開発するうえでも非常に有用なものと思われる。
インシュリン様成長因子Ⅱ(以下IGFⅡ)は,インシュリンときわめて類似した構造をもち,インシュリンと同様に糖代謝亢進作用および細胞増殖促進作用を示すポリペプチドホルモンである1~3)。IGFⅡの生体内での真の役割はまだほとんどわかっていないが,産生組織が主に胎児期の各種臓器に限定されているために,胎児性細胞増殖因子と考えられてきた4~8)。最近,成熟個体の脳・脊髄中にも比較的高い濃度のIGFⅡmRNAが検出され,本因子が中枢神経細胞の増殖や分化の面でも,さらにその代謝調節や生存においても重要な役割を果たしていることが指摘されはじめている。本稿では,中枢神経系におけるIGFⅡ発現の特異性および培養神経細胞に対する作用について解説し,その神経栄養因子としての可能性について考察したい。
The insulin-like growth factor Ⅱ(IGF Ⅱ), which is one of major IGFs, is a small mitogenic polypeptide with structural and functional homology to the hormone insulin. In vitro, IGF Ⅱ stimulate a broad range of insulin-like actin, including acute metabolic effects, as well as long term mitogenic effects. Although the actin of IGF Ⅱ in vivo is less well defined, studies of IGF Ⅱ expression suggest that it has a function in fetal and early neonatal development. Recent evidence also indicates that IGF Ⅱ may serve an important factor in the function of the central nervous system.
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