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がんは日本人の死亡原因の第1位を占め,現在では約3人に1人ががんで亡くなっている。そのため,がんの治療のみならずがん患者のQOL向上が強く求められている。がん患者のQOLに大きな影響を与える要因の1つが痛みである。現在,標準的がん疼痛治療法として,モルヒネなどのオピオイドを中心とした薬物療法であるWHO方式がん疼痛治療法が広く普及している。WHO方式がん疼痛治療法により70~90%の患者で痛みが緩和するが,骨転移性疼痛はオピオイド抵抗性でありWHO方式がん疼痛治療法によっても,しばしば十分な鎮痛が得られない。そこで筆者らは,骨がん性疼痛の機序を解明し,新たな治療法を提示するためにマウス骨がん疼痛モデルの解析を行っている。その結果,骨がん疼痛モデルでは末梢神経レベルでμオピオイド受容体の発現がmRNAレベルで低下するとともに,抗オピオイドペプチドCCKの受容体であるCCKB受容体発現が増加しており,骨がん性疼痛のオピオイド抵抗性の原因であると推測される。一方,末梢神経レベルではカプサイシン受容体であるTRPV1発現が,mRNAレベルで増加するとともにその分布や発現細胞の表現型が変化することに加え,TRPV1拮抗薬投与により,骨がん性疼痛関連行動が抑制される。したがって,TRPV1は骨がん性疼痛発生の重要な分子であると考えられる。また,骨がん性疼痛発生に寄与する生理活性物質としてエンドセリン-1が知られているが,エンドセリン-1はその受容体であるETA受容体を活性化し,PKC依存性にTRPV1をリン酸化し,熱・酸・カプサイシンに対するTRPV1の反応性を増強する。また,TRPV1ノックアウトマウスでは,エンドセリン-1皮下投与によって惹起される熱性痛覚過敏および自発痛関連行動が著明に抑制される。したがってエンドセリン-1による疼痛発生には,TRPV1との機能的連関が必要である。以上により,TRPV1は骨がん性疼痛治療のターゲットとなりうると考えられる。
Bone cancer pain is difficult to treat and has a strong impact on the quality of life of the cancer patients. Now, we have tried to analyze a mouse model of bone cancer pain. To date, we found two mechanisms of bone cancer pain. One is the down-regulation of μ opioid receptor expression and the up-regulation of CCKB receptor in peripheral nervous system. The other is the involvement of TRPV1. TRPV1 expression was increased in the DRGs in a transcription-dependent fashion, and pharmacological blockade of TRPV1 reduced bone cancer-related pain behaviors. In addition, the activation of TRPV1 is required for pain induced by endothelin-1, which is an important mediator for bone cancer pain. Therefore, TRPV1 activation plays a critical role in the generation of bone cancer pain.
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